フレイルには可逆性がある。

【記事内容ポイント】

  • フレイルには可逆性がある。
  • フレイルからただちに回復することは少なく、フレイルからプレフレイル、プレフレイルから健常へと時間をかけて回復していく。

 

[su_heading size=”18″]フレイルの可逆性[/su_heading]

今回は、フレイルの可逆性がテーマです。実はフレイルであっても、改善し、もとの健常な状態に戻る可能性があるのです。

Metabolism Clinical and Experimentalというジャーナルに2003年に掲載されたあるレビューの抄録を紹介します。

“Frailty in The Elderly: Contributions of Sarcopenia and Visceral Protein Depletion”, Vanitallie TB, Metabolism. 2003 Oct;52(10 Suppl2 ):22-6. 

“65歳以上になると、かなりの割合(6%~25%)でフレイルに悩まされるようになります。フレイルは複雑で、まだ明確な定義は存在しませんが、特徴的なサインと症状についてのコンセンサスは大きくなってきています。フレイルに悩まされる典型的な患者においては、筋力は減少し、疲れやすく、身体活動は低下し、歩行は遅く不安定であり、転倒のリスク(や恐れ)の増加を伴っています。食欲は低下し、体重が減少する傾向となります。フレイルである人々は、フレイルでない人々と比べて認知症やうつ病になりやすくなります。彼らの寿命は短くなります。もちろん、フレイルは併発する疾病の多様性によりしばしば複雑化します。

フレイルの生物学的な特徴は、サルコペニア(筋肉量減少)、骨折の増加を伴うオステオペニア(骨質減少)、炎症性サイトカインや凝固障害のマーカー上昇といった炎症・凝固系の亢進です。数多くののホルモンの加齢変化もまた、高齢者のフレイル進行を促進するようです。特に、異化サイトカインの活性化が筋肉量の減少・強さの低下、骨密度の減少の原因となります。とりわけ、成長ホルモン(GH)インスリン様成長因子(IGF-1)の血清値は加齢に伴って徐々に減少していきます。

フレイルの人々のGHやIGF-1(や他の同化ホルモン)の減少が、フレイルではない人々と比べて、より大きいのかどうかということについてははっきりしていません。GHを管理することがフレイルの改善に有効であるかどうかについてはもっと多くの研究が必要です。多くのフレイルの人々において起こる食欲低下と体重減少は、内臓タンパク(visceral protein)消耗の程度にともなう傾向にあります。内臓タンパク消耗は、トランスサイレチン(TTR)レチノール結合タンパク(RBP)アルブミンのような指標の測定によって計算することができます。フレイルは、本質的な加齢による影響とはその可逆性により区別することができる、ということが一つの特徴です。レジスタンストレーニングは、筋量や筋力を増やすことによって高齢者の多くに―たとえ超高齢であっても―好ましいものであると言えます。身体的なフレイルは、もとにもどり得るものなのです。また、不十分なカロリー摂取やタンパク摂取によって内臓タンパク消耗が引き起こされるということは、より十分に食事摂取することで、TTR、RBP、アルブミンを改善させ、フレイルにおける栄養状態を改善させることができると言えます。”

  • 運動による筋量、筋力の増加
  • 十分な食事による、栄養状態の改善

これらがフレイルを改善させるための重要なカギとなるのです。

 

“Transitions Between Frailty States Among Community-Living Older Persons.”, Gill TM, Gahbauer EA, Allore HG, Han L. Arch Intern Med. 2006 Feb 27;166(4):418-23.

こちらは2006年に発表されたフレイルの可逆性・移行性についての研究論文です。70歳以上の高齢者っを対象として、Friedの基準に準じた方法にて健常(非フレイル)・プレフレイル・フレイルに分類したのち、それらのフレイルの状態が開始時から18か月後・36か月後・54か月後でどのように変化したかを検証しています。

その結果、非フレイルの健常人も時間経過とともにプレフレイルやフレイルになってしまったり、また逆にフレイルであっても非フレイルに改善する人もいる、ということがわかりました。しかしよく見てもらえばわかりますが、フレイルから直接に非フレイルに移行する人はほとんどおらず、フレイルがただちに回復することはなかなか難しいようです。フレイルの改善というものはゆっくりであり、フレイルからプレフレイルへ、プレフレイルから非フレイルへと段階を踏みながら回復していくことが多いのです。

では、フレイルを予防したり改善したりするための、適切な運動・食事とはいったいどのようなものでしょうか。

実はこのテーマについてはたくさんの研究がまだまだ行われている状況です。

今後とりあげていきたいと思っています。