もうひとつのフレイル診断「障害モデル」

【記事内容ポイント】

  • 障害モデル(Accumulated deficit model)… フレイルをさまざまな障害や機能低下が蓄積したものとして捉える。
  • Deficitリストを用いて調べる。
  • Frailty Index = 対象者が有するdeficitの項目数 / リストのすべてのdeficitの項目数
  • Frailty indexがおおよそ0.25以上の場合、フレイルと診断されることが多い。

 

[su_heading size=”18″]フレイルの障害モデル[/su_heading]

以前、フレイルの診断法として、2001年にFriedらが提唱したCardiovascular Health Study(CHS)基準を紹介しました。

フレイルについての標準的な基準というものは未だ存在せず、議論のあるところです。しかしFriedらの基準はかなり多く、そして広く用いられています。

“Measures of frailty in population based studies: an overview.” Bouillon K et al, BMC Geriatr. 2013;13:64. Review.

こちらの論文は、さまざまなフレイル基準について学術論文内でのその引用数や信頼性・妥当性を評価したものです。著者のBouillonらはFriedらの提唱したCHS基準がフレイルに関する学術論文の7割近くでその診断法として採用されていると報告しています。(下図:上記論文より筆者改)

このFriedらの基準を用いた様なフレイルの捉え方は、「表現型モデル(Phenotype model)」と呼ばれています。これは加齢にともなって表在化して出現してくる徴候を捉えて診断するものです。フレイルの概念の捉え方にはこの「表現型モデル」とは異なった、もう一つのモデルが存在します。それは、「障害モデル(Accumulated deficit model)」と呼ばれています。障害モデルでは、フレイルをさまざまな障害や機能低下が蓄積したものとして捉えます。Rockwoodらによって提唱されたものが代表的です。

Rockwood K, Mitnitski A. Frailty in relation to the accumulation of deficits. J Gerontrol A Biol Sci Med Sci. 2007 Jul;62(7):722-7.

この方法は「deficit(欠点)」とされた項目の有無について評価をします。deficitの項目数は通常何十という数にわたります。たとえば、下表1のような感じの項目がdeficitのリストになります(上記論文より引用、筆者改)。

Deficitは生活機能・疾病・検査値・健康感など多岐にわたり、さまざまな項目に基づく指標が挙げられています。そして対象者が有するそのdeficitの項目数をすべてのdeficitの項目数で除した値をFrail indexと言います。

このグラフは上記の論文からの引用ですが、高齢者集団内におけるfrailty indexの分布グラフになります。横軸にfrailty indexの値をとり、縦軸に対象者における割合%をとっています。Frailty indexの範囲は0から0.66にわたっており、平均値は0.16でした。Deficitリストを構成する項目の数や内容によって同一ではありませんが、障害モデルのフレイル診断におけるfrailty indexのカットオフ値はおおよそ0.25とされています。この方法によってフレイルと診断された高齢者においても生命予後をはじめ、転倒・施設入所など望ましくない結果と有意に関連があることが、多数の論文によって報告されています。

この障害モデルによるフレイルの診断は、チェックしなければならないdeficitの項目が数多くあるため、一度の診療のみで評価を完結させることがなかなか難しいということがデメリットだと言えます。しかし逆に言えば、さまざまな情報やデータを用いた数多くの側面からの分析であるため、フレイルの正確性・妥当性において有用性が高いといえます。加えて、frailty indexという数値をもってフレイルの状態を表現するため、個々人におけるフレイル状態の経時的変化を観察・評価できるということがこの障害モデルの大きなメリットになります。